三年半くらい前に三十代で亡くなった男がいた。
癌だ。
発見したときには、医者にあと半年と言われた。
「高山さん、俺癌になった。」
え?
「大腸癌。もうステージ4で厳しいらしい、」
「・・・」
「なんで俺のなのか?」
「・・・」
彼とは月に一回、一緒に立川に行っていた。
その車の中でいろんな話を聴いたし、私もたくさん語った。
しばらくして彼は言った。
「自分は、本当はトライアスロンをやりたかった。それが親の仕事を継ぐことになって、嫌々仕事をしていた。」
「いつもしかめっ面で働いていた。そのストレスが癌を生んだんだと。」
「家族に凄く迷惑をかけてきた。」
私は、うんうんと聴くしかなかった。
ある日、こんなことを言った。
「癌になってよかったと思います。癌にならなければ、たくさんの人に支えられていることがわからなかった。」
自分は絶句した。
凄い男だとおもった。
またある日、こうも言った。
「自分の周りには凄い人がたくさんいる。凄い人と凄い人を繋げるのが自分の使命だと思うんです。」
その言葉通り、彼は行動した。
家でバーベキューしてたくさんの人を招いたり、マラソン大会にみんなででたりした。
コーチング研修では、たくさんの人が彼と関わった。
身体がうまく動かないのに、献身的に動いていた。
彼の周りには、徐々に人が集まってきた。
いつも笑顔だった。
奇跡は起こる。
本気でそう思っていた。
年が明けて、なんとなく彼の家に行った。
私の家から2時間くらいかかるんだけど、なんか呼ばれるように行った。
彼は、もう意識が飛びそうなくらいふらふらだった。
やばい。
本能的にそう思った。
もう倒れそうなのに、それでも感謝の言葉を発していた。
「高山さん、ありがとうございます。」とふらふらの手で握手をしてくる。
意識が朦朧の中、最後まで感謝の言葉。
泣いた。
本気で泣いた。
彼はその二週間後に天国に行った。
2年半生きた。
医者に半年と言われたが2年半生き切った。
最後まで感謝で生きた彼のミッションは、人と人を繋げること。
今、自分のミッションとして脈々と生きている。
彼の心境には当然なれない。
でも、彼の顔が今でも目に浮かぶ。
凄い男だ。
絶対に忘れない。